以前、別の記事で紹介した『書道講座』という書のシリーズ本。
古い本ですが、書を深めたい人向けの必読書として取り上げました。
やや難しい内容かもしれませんが、中身に触れて紹介したいと思います。
各巻の冒頭に、そうそうたる文化人のエッセイが掲載されています。
高村光太郎、吉川英治、井上靖、川端康成、武者小路実篤、棟方志功、中川一政。
昭和の文化人代表のようなメンバーで、どの文章にも慧眼が光っています。
この冒頭の随筆だけでも読む価値ありです。
特に高村光太郎(詩人・彫刻家)は、書への造詣の深さに驚かされます。
そして、半端ではない辛口批評です。
空海と小野道風は褒めていますが、中村不折や河東碧梧桐などは「俗」、中林梧竹も「素直でない」、副島種臣も「癖を出しする」、西郷隆盛も「よいとはいえない」。
ほんとうに厳しい審美眼です。
個人的には、明治期の政治家の字は凄いと思っいます。
現代と違い、筆を普段から持つので、生き方が字に表れるんですね。
このエッセイは、当時の書道界の展望に触れて、締めくくられています。
書が「純粋な造形芸術」として追及される傾向が出てきて、それを期待と不安が入り混じる気持ちで見ている、とあります。
高村光太郎が生きていたら、いまの書道界、作品をどのように見るのか、気になるところです。