京都に住む叔父から、「百寿図」に続いて、骨董市の掘出し物をいただきました。
「三体千字文(さんたいせんじもん)」村田海石書。
「千字文」というのは、習字のためにつくられた、4字で一文、合計1000文字の詩文です。
同じ字は2回出てきません。
アルファベットの各字を1回ずつ使って文章をつくる「パングラム」という遊びがありますが、それに似ています。
千文字としては、智永の真草千文字(真は楷書で、楷書と草書の二体)がよく知られていますが、日本でも中国でも、その時代の大家によって、たくさん書かれています。
こちらの三体千字文は、楷行草の三体で書かれています。
奥付には「文部省師範学校御蔵版 官許翻刻 発売所」とあり、師範学校で使われたテキストでしょうか。
落款には乙亥(きのとい。1875年)に書いたとあり、この本の持ち主も明治22(1891)年と書いてありますから、古いですね。
村田海石という人、私は存じませんでしたが、幕末の三筆の一人、巻菱湖の孫弟子のようです。
千文字が教科書になるということは、当代を代表する名手と推測できます。
臨書してみると、端正にして優美、それでいて筆の進路が分かりやすく、すぐれた手本だとわかります。