天朗庵の入口に新しい作品を飾りました。
まん中の絵のような文字は、「馬」の古い字体(金文)です。
ことわざで、「天高く馬肥ゆる秋」。
空が澄み渡って高く見え、馬たちの食欲も増して逞しく育つ――秋の清々しい時節を表す言葉です。
書では、横書きはふつう右から左に書くので、「く高天」のような並びになっています。
「馬」の字は、紀元前の青銅器に残っている形で、馬の顔やたてがみ、四本の脚が見てとれます。象形文字であることがわかるくらい、古い字体です。
秋空の下を駆ける駿馬の姿が浮かぶように、勢いのあるタッチを出そうと試みました。
書き上げてみると、「この馬はやさしそうな目をしている」とか、「のたのた走ってるたい」とか、一つ一つの作品の馬に個性のようなものが見えてきます。
そのなことも、古い文字を書く楽しさです。